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スペシャルインタビュー#1
発信力のあるアーティストをめざせ!
業界の新人発掘プロデューサーと、職人ドラムテックのお二人から、音楽の世界をめざす人たちへの熱きアドバイス。必見のロングインタビューをお見逃しなく!
加茂 啓太郎
EMI Music Japan 新人発掘育成グループ Great Hunting プロデューサー
1960年東京出身。育ちは横浜。初めて買ったシングルは小学校2年の時の「帰って来たヨッパライ」。高校2年の時の遠藤賢二のライブをたまたま見て、ものすごいショックを受ける。大学でパンタの追っかけ、リザードの追っかけという二人の先輩に大きな影響を受け、ライブハウス通い。自身でもバンド結成、ライブ・ハウスに出演するが曲のサビが作れないことに気づき、断念。
83年、東芝EMI入社。邦楽制作手ディレクターとして手がけたアーティストはサンディー&ザ・サンセッツ、ちわきまゆみ、ウィラード、VOWWOW、FUSEなど。 90年ごろより発掘の業務を手がけだし、ウルフルズ、SUPER BUTTER DOG,オリジナル・ラブ、ナンバーガール、Art-School、氣志團、フジファブリックを発掘育成。 最近は湯川潮音とBaseBallBear、KUMAMI 、チョモランマトマト、mass of the fermenting dregs を手がける。 EMIミュージック・ジャパン 新人発掘グループ”GREAT HUNTING"を主宰。
Great Hunting HP:http://www.great-hunting
加茂啓太郎 blog :http://blog.goo.ne.jp/peaceboat1
今村 公治
有限会社ツインパワー代表取締役(ミュージシャン&作家コーディネイト会社ドラマー ドラムテクニシャン ドラムトレーナー)
1961年東京都出身。中学〜高校と九州・大分県で育つ。大学入学と同時にドラムを始め、23歳の時にビクターインビテーションレーベル(現在スピードスターレーベル)よりバンドのドラマーとしてメジャーデビュー。残念ながらそのバンドは売れずに解散。同時にサポートドラマーとして80年代のアーティスト(子比類巻かほる・松岡英明・BIGINなど)のライブ&レコーディングに参加。89年よりEMI加茂氏の手がけるアーティストのドラマーのトレーナー&ドラムテックとして若手のサポートに関わる『THE FUSE(1989)〜BASEBALL BEAR(2008)』。現役ドラマー&テックを続ける傍ら、95年〜05年まで専門学校ESPミュージカルアカデミーのデビューサポートセクションにて新人アーティスト発掘&育成に参加、EXILEのATSUSHIやSCANTYのメンバーのデビューに貢献する。
05年、ミュージシャンと作家のマネージメント会社である有限会社ツインパワーを起業。07年、同社で提供した伊藤由奈(SONY RECORD)のシングル「Truth」(映画「NANA2」の劇中歌)がアルバム「HEART」の1曲としてオリコン1位獲得。ファンキーモンキーベイビーズ(DREAMUSIC)のシングル「Lovin Life」・「もう君がいない」などのオリコンチャートトップ10入り楽曲も提供。
最近はドラマーとして伊藤由奈「ENDLESS STORY」・「Truth」など、テックとしてはBASEBALL BEAR ・エレファントカシマシ最新アルバムに参加。
ツインパワーHP:http://twinpower.jp/
狙う新人は、しょうゆバターのようなオリジナリティのあるアーティスト
−−EMIの新人発掘プロデューサーとして、ズバリどんな人がプロになれますか?
加茂:「基本的には努力とセンスを磨けばある程度の方はなれると思います。あらゆるところにデモテープなどを送って、それが認められれば誰かがきっと気づきます。例えば高校野球で、田舎の学校で150km/hのボールを投げる投手がいたら絶対に話題になりますよね。だから、どんなにいい曲を作っても友達に聴かせるだけだったら、どこにも届かないわけです。自分が音楽で生きていきたかったら自ら発信することが必要。そういう発信力のあるアーティストになってほしいですね。そして技術はないよりあったほうがいい。楽器・歌・作詞などにしても、努力してスキルアップしていくことが大事です。でもそれらは音楽的な技術のことなので、才能のある人はそこから1歩抜け出して成功するし、そうでない人は技術屋としてミュージシャンをめざせばいいと思います」
−−音楽的才能と言われましたが、新人発掘プロデューサーの立場から見てどういう人ですか?
加茂:「今までに誰もやったことがない音楽をやっている人ですね。といってもまったく新しい音楽なんてないですから、例えば組み合わせの仕方にオリジナリティがあったり。ミスチルっぽいとか、スピッツっぽいとかリップスライムっぽいとかだけではぜんぜん響いてきませんよ。それらに何かが“オン”されていることが重要です。料理に例えると、しょうゆバターを作った人はすごいじゃないですか。(笑い)音楽には音階があってリズムがあって、そこにはルールがあるので、メチャクチャにすることは音楽的快感から離れるけど、既存のものにちょっとした工夫があると新しくて面白いものに聴こえるんですよ。オアシスはコード進行とかは、まんまビートルズですけどちょっとパンクっぽくなるんです。で、「イエスタデイ」のようなソフトな曲調のところは除いて、パンクっぽい尖ったところが“オン”されている。そこがオアシスの新しさだったんです。そこにセンスを感じるんです。ドライバーでも同じことで、タクシードライバーにはなれるけど、F1ドライバーにはそうそうなれないのと同じことだと思います」
技術は並でも人柄で認められることも大事なこと
−−ある程度練習すれば技術アップするというお話ですが、ドラマー/ドラムテクニシャンの立場から見るといかがですか。
今村:「今のお話でいえば、アーティストはF1ドライバーだから、そうするとごく少数の人しかなれないですね。音楽の世界でいえばアーティストとしてメジャーレーベルからデビューして売れて、収益もあって有名になるということだと思います。しかし、ここに届く人のほうが圧倒的に少ないわけです。だからアーティストとしてブレイクすることはできないけれど、音楽の世界で生きていくということで“技術”ということになるわけです。そうすると僕自身がすごくいい例で、最初にビクターからデビューしたがあえなく解散して路頭に迷うわけですよ。レコード会社も『解散しちゃったから残念だったね。がんばってね』で終わりですよ(笑い)。でもどうしても音楽で食べていきたいと思っていた。そんな時に、ありがたいことにいろんな方が協力してくれて『バックバンドやってみるか』ということになって、それからは職人的に技術を必死に磨きました。アーティストとしてトップで輝く人もいれば、求められたことに対してきっちりと応えられる職人的なミュージシャンもありですよ。僕はそこでやらざるを得なかったし、そこでしっかりとした職人的な技術を持っていれば、独創的な個性として売れることはないけど、ニーズはちゃんとあるわけです。例えばソロシンガーがコンサートする時には絶対にミュージシャンは必要ですよね。そこでドラマーのいすを勝ち取るには、やはり技術がものをいうんです。とにかく、求められたことをきっちりやることが大事ですね。そういう意味では、努力すれば誰でもプロにはなれます。僕もこれまで若い子たちにドラムを教えてきてるけど、やっぱりこのことを言いますね。
『オレ、勉強して東大入るんだ』って言って、4、5浪してる人は、多分勉強してないと思う。その人は時間ばかりかけている割に、努力の質が問われていないんだと思う。職人のミュージシャンになるにも競争はとても厳しいです。言葉は悪いけど、しっかりいただいて、しっかり求めらるものに応えて、さらに人柄さえ良ければ誰でもいいんです。やはりいろんな人とコミュニケーションして音楽を作っていくので、人柄はとても大事です。極端に言えば、技術が並でも相手の求めることがすぐにわかったり、すぐに実行できたり、配慮があるミュージシャンは多くの仕事につけると思います。音楽は1人ではできません。コンサートツアーをやる時は、音響さん、照明さん、ローディさん、レコード会社のスタッフさん、事務所のマネージャーさんと、それこそ40〜50人の大所帯になります。ここでは誰が偉いとかではなく、みんなが一緒になって作り上げていくために仲良く仕事できることはすごく大事なんです」
加茂:「だから僕も基本的な礼儀は教えますね。腰が低くて損することはないし、一度デビューしたら年齢は関係ないから」
−−でも自分のポリシーは絶対に曲げないという若いミュージシャンもいますよね。
今村:「もちろん音楽的主張は頑固でいいんです。ただ、あいさつをするとかは音楽とは関係なく、人として大事じゃないですか。人との話し合いもちゃんとできるんだけど、音楽ではこうしたいという主張は曲げないというのが、正しいアーティストですね」
加茂:「何でも、『ハイハイ、わかった』という人よりもむしろ多少手応えがあったり、手強かったりするほうが、才能があったり売れたりしますね」
デモ試聴月1,000本。でも響くのは1本の厳しさ
−−そういう新人を発掘しているお仕事とのことですが、具体的にどのようなことをされてるんですか?
加茂:「デモテープ集めです。新人がデモを作ってどこに送ろうかとなった時に『グレートハンティング』がファーストアドレスになることを目標にしています。送られたデモを聴いて、『オッ、これちょっと電話してみよう』というのは1,000本に1本くらいです。年間1万本が目標です」
−−加茂さんが新人を発掘された中で最も成功したアーティストは?
加茂:「僕が関わった中でミリオンアーティストとなったのはウルフルズですね。出会ってすぐに、『面白いからウチでやろう』 と。でも最初の2年間は彼らもバイトしながらやってましたね。本人たちは大阪では400人くらいは集めてたから、自信満々で上京したんですが時間はかかりましたね。そこからさらに1年半かかってついにブレイクしたんです。
あと、氣志團が30万枚かな。彼らは2年かからなかったね。出会った時にはすでに完成していたんだけど、曲がなかったのでとにかく曲を作れと」
−−ウルフルズがブレイクするまでの期間、加茂さんとはどんなやり取りをしていたんですか?
加茂:「その時は、僕は宣伝だったのでそれほど近くはなかったですが、ライブは良かったからライブ中心でやり直そうよという話はしてました」
−−ミュージシャンに与えるテーマは、相手に合わせて足りないものを出していくとか?
加茂:「アマチュアバンドに言うことは、週2回練習して次に2曲作って、月に1回ライブをやりそれを2年続けて、それでも何も変わらなかったら考え直したほうがいいよと」
−−その間アマチュアには金銭的な援助のような制度もあるんでしょうか?
加茂:「育成契約というのがあります。お金がなくてバイトに追われてリハができない時など、多少楽になるようにということで正式契約の前段階のような支援体制です。あとはウチが月決めで借りているリハーサルスタジオを使ってもらうような支援もしています。とかくこのご時世ですから東京での1人暮らしも大変ですからね」
音楽専門学校のうまい使い方
−−ちょっと話は変わりますが、よくロックは習うものじゃないと言われますが?
今村:「答えになっているかわかりませんが、いくら練習してもうまくなれないという話を聞きます。その時に僕がいつも言うことは、『どれだけ練習すればいいのかということに置き換えるとわかりやすくて、そうするとその答えは、どれだけ音楽好きかということ』になるんです。音楽でプロになっていくほとんどの人は楽器を離さない。よく、肌身離さずと言いますが、そこに楽器が入っているかどうかですね。ギタリストだったら抱いて寝るとか言いますが、それくらいプライベートすべてにおいて楽器が頭から離れないくらいじゃないと。あとはどういう質の練習をするかになるわけですが、とにかく最初だけは基本を学んだほうがいいと思います。音楽にはいろんなルールがあるので、それは知ったほうがいい。ビートルズは3つのコードで曲を作ったというけど、まずそれをやってみて、その次は何だろうとやっていけばどんどん学びが広がります。僕が専門学校の先生をやっていた時に学生に言ったことは、『僕が5年かかって覚えたことを2年で教えよう』。1人でやっているとそれくらいかかるんですよ。わからないことを誰に聞いていいのかもわからない。この弾き方が合っているのかどうかわからない。
僕がアマチュアだった頃は、それを知るために月1回のライブに行って自分よりうまい人を見て、『あの手の動かし方は何だー!』てびっくりして『どんな練習してるんですか』って聞いて教えてもらうんです。1つの手首の動かし方がわかるのに1カ月かかることもあるんです。でも学校の先生に聞けば一発解決ですよ。学校はそういうことのためにあると、いつも言っていましたね。教えてもらう場所があるのとないのとでは、上達するまでに倍くらいの時間差が出ますね」
−−そうすると、やはり学校へは行ったほうがいいと。
今村:「基本を学ぶためには行ったほうが絶対にいいです。ただ、行ったらプロになれるということでもないし、行かなかったらなれないということでもないんです。だから僕は、学校とはいい関係を作ったらいいよと言っています。例えば、週5回学校があって、ちゃんと出席しているとやった気になるんですね。大事なことは学校から帰ってからなんです。今日習ったことを完全マスターしよう!というくらい復習することなんです。同時にバンドを組んでいたらその活動もちゃんとやること。まあ、高校生の時からギター抱えて不登校だったらまずいけど(笑い)」
「バンド=人生捨てる」も今は昔。市民権を得ている今が羨ましい。
−−ところで加茂さんは学生時代にバンドやっていたようですが。
加茂:「やってましたが、プロになろうという気はまったくなかったですね。バンドで食っていこうなんて思ってもいませんでした。今では中途採用は当たり前ですが、当時レコード会社は新卒採用が基本でした。軽い気持ちで受けたら入ってしまい(笑い)。僕は日本のロックが好きだったので、いいバンドがいたら紹介したいなという思いはありましたね。世良公則さんやゴダイゴのようなグループはメジャーでしたが、僕が好きだったパンクやニューウェーブなどのコアな音楽は全く認知されていませんでしたからね」
今村:「今では市民権を得ているから恵まれてるね」
加茂:「そう。だからあとはバリバリのスタジオミュージシャンになるしかなかった。当時はフリーターなんて言葉もなくて、バンドやるってことは人生捨てたとイコールだったから親もあきらめてたね(笑い)」
−−今村さんはそういうことを親に話したんですか?
今村:「僕は親にそう言って大学を辞めたんです(笑い)。いやー、怒鳴られましたよ。それでも、卒業するはずの23歳までに絶対プロになってみせるって。だめだったら田舎に帰ると約束し、23歳の3月にビクターからデビューを果たしました。大学辞める時に親に最後のお願いとして、ドラムセット買いたいから分割払いの保証人になってもらって。それで3畳1間にドラムセットと布団ですよ。ありがたかったなあ」
とにかく聴いて、演奏して、感動して、プラス思考で考えろ!
−−いい話ですねえ。では皆さんの若い頃のお話をうかがったところで、これを読んでいる高校生にメッセージをお願いします。
加茂:「小説家になろうと思ったら小説読まないと書けないのと同じで、音楽やろうと思ったらとにかく聴かなくちゃダメ。でも聴かない子が多いですね。それと、自分が感動しないと人に感動を与えられないので、何でもいいから自分が感動する体験を積極的に見つけてほしいですね。なんだかんだ言っても10代に影響を受けたものが50、60代まで引きずるわけですから、10代の感動がベースになってくる。お金はないだろうけど、時間はあるだろうからね」
今村:「一度、自分は何に向いているのかをじっくり考えてみることを勧めます。決まったらあとはプラス思考で考えたほうがいいです。マイナス思考になると、時間がないからできない、お金がないから買えないと、できないことが前提になってしまいます。ではなく、どうしたらできるようになるか?というような気持ちがほしいですよね。これは、音楽に限らずどんな世界でも同じだと思いますが」
−−今日は長い時間、すばらしいお話ありがとうございました。
加茂・今村:「こちらこそありがとうございました」
加茂氏主催の『グレートハンティング』WEBサイト
http://www.great-hunting.com/
ツインパワーHP
http://twinpower.jp/
















